Shuttleworth氏、Ubuntu 8.04リリースのカウントダウンを開始

 Ubuntuファンにとって次の記念日は4月24日である。この日、Ubuntu 8.04 LTS (Long Term Support) がリリースされる。開発元の英CanonicalのCEO、Mark Shuttleworth氏はUbuntuの次期バージョンが予定どおりリリースされ、エンタープライズ、デスクトップ、インターネットの各ユーザーに少なからぬものを提供すると確約した。

 あるインタビューの中で、Shuttleworth氏は「実は期日を守るという点で、オープンソースのソフトウェア・プロジェクトとLinuxディストリビューションはプロプライエタリ企業よりもすぐれているのです」と指摘した(これは既に多くの企業トップが認めるところでもある)。「(特に)今の企業はLinuxとVistaを比較しています。そして、Linuxのほうが期待にかなう働きをすることが明らかになっています」

 「期待にかなうという意味では、プロプライエタリのソフトウェアのほうが期日を守って出荷できそうな印象があります。トップダウンの組織であり、ビジネスはそう組織されるべきだと多くの人は考えています。ですが、実際にはボトムアップのイノベーションのほうがスケジュールに忠実です。これがフリーソフトウェアの本当の名声であり、プロプライエタリ陣営が実現に苦労する課題なのです。(現在では)プロプライエタリのソフトウェアやオペレーティングシステムがいつ正式出荷されるのか知ることは、とても困難です」

 Shuttleworth氏にとって、リリース日を守ることは従来になく重要である。というのも、Ubuntu 8.04の目標はエンタープライズ・サーバのニーズを満たすことだからだ。「Ubuntu 8.04 LTSは、長期間の配備に耐えることを目指しています。サーバ版に関しては、5年間サポートします。デスクトップ版は3年間です。このサポート期間の長さはビジネスにとってきわめて重要です。オペレーティングシステムを気軽に切り替えることはできませんから」

 2006年6月にリリースされた前回のLTS(6.06)とは違い、今回CanonicalはUbuntuのビジネス配備をほぼ単独で進めるわけではない。「大きな違いは、他の企業からのサポートがあることです。Sunは、x86サーバ製品ラインでの動作を認定中です。大手ベンダでは初めての認定となります。プレインストールではありませんが、Linuxの伝統的なスイートスポットであるx86製品ラインで正式に認定され、支援されることから、企業がUbuntuを試してみる機会が増えると期待しています」

 「すべての大手サーバーベンダ、つまりIBM、Dell、Sun、Hewlett-Packardが、Ubuntuをエンジニアリング面でサポートするようになりました。基本構成のサーバから高いパフォーマンスが発揮されています」

 このようにデスクトップよりもサーバに狙いをしぼった結果、「ビジネス収益の70%はサーバサポートから得られています。ですので、サーバの採用状況はCanonicalにとって非常に重要です。(同時に)顧客とISV(独立系ソフトウェアベンダ)はUbuntuサーバソフトウェアを求めています」

 Shuttleworth氏は、Canonicalが”ポイント”ハードウェア・アップデートをUbuntu 8.04向けに出荷することも明らかにした。このアップデートは、8.04のリリースから3か月後に開始され、以降は6か月ごとにリリースされる。これにより、Ubuntu LTSは、チップベンダから提供される新しいCPU機能をサポートできる。

 これと並行して、Ubuntuの新しいバージョンも引き続き現在のスケジュールでリリースされる。つまり、8.04向けの最初のハードウェア・アップデートが7月にリリースされ、次いでUbuntu 8.10が10月にリリースされる。これについて、Shuttleworth氏は断言する。「非常に確度の高いリリース・スケジュールです。他のLinuxディストリビューションも同じようなリリース周期を採用してくれるとうれしいですね。すべてのLinuxディストリビューションにとって大きなメリットになるはずです」

デスクトップ版の開発

 サーバの話題ばかりだが、Shuttleworth氏がデスクトップ版を忘れてしまったと思ってはいけない。「Ubuntuを試すユーザの苦労を軽減するために努力しています」。特にShuttleworth氏はWubiの働きぶりに喜びを覚えている。

Wubi翻訳記事)を使うと、Windowsユーザは(Vistaユーザでさえ)Ubuntu 8.04を最新のシステムに一般のWindowsアプリケーションと同じようにインストールできる。ブート用CDを作成する必要はなく、ハードディスクのパーティションを再作成したり、ブートローダを使う必要もない。

 Wubiは、ほとんどのWindowsユーザが気軽にLinuxを試せるようにしただけでなく、「イノベーションがコミュニティと周縁部で起こることの完璧な例でもあります。今やWubiはコア開発者に認められ、Ubuntuの主要機能となりました。他のディストリビューションがこの機能を採用し、独自の”Wubi”を作成するのを見ることは楽しいですね。Linuxを知るユーザが増えることは、私たちすべてにとってプラスです」

 デジタル著作権管理(DRM)について、Shuttleworth氏は「コンテンツ業界がDRMを新しいビジネス市場を阻害するものと認め、特許権のないコーデックを採用する日が来ることを切望」すると語る。さらに「弊社はメディア再生についてできることに多大な努力を傾注しています。ミュージックストアをRhythmboxと統合し、F-SpotFlickrに統合しました。(さらに)Ubuntu 8.04には、ストリーム・ビデオをMythTVに緊密に統合する機能もあります。これで、Mythの魔力を活用できます。MythTVストリームをUbuntuで表示するために、月の満ち欠けのどの段階で、どのいけにえを捧げるかを知る必要はなくなるのです」

 これらを総合して、UbuntuユーザはUbuntu 8.04をすぐれたディストリビューションと認めるだろうと、Shuttleworth氏は感じている。その用途がビジネスであれ、デスクトップであれ、未経験者にLinuxを紹介することであれ。

Steven J. Vaughan-Nicholsは、PC用オペレーティングシステムとしてCP/M-80が選択され、2BSD Unixを使うことがクールとされた時代から、テクノロジおよびそのビジネス利用について執筆活動を続けている。

Linux.com 原文