大いに盛り上がったOSCON開催3日目

オレゴン州ポートランド発 ― 昨日(26日水曜)、O’Reillyによる第8回オープンソース・コンベンション(Open Source Convention:OSCON)は大きな盛り上がりを見せた。展示フロアが開場となったほか、発表やBOF(Birds of a Feather)セッションが一杯に詰まった1日だった。

OSCONで問題になるのは、聞きたい発表を選び、すべてのイベントに顔を出す時間を捻出しながら、いかに睡眠時間を確保するか、である。一般のセッションは毎朝8時半頃に始まり、夕方6時に終わる。その後、BOFセッションやパーティーが夜遅くまで続くのだ。

政府機関におけるオープンソースソフトウェア

この日、最初に聞いたのはRadiantBlue TechnologyのJohn Scott氏による「オープンテクノロジの開発:オープンソースと米国政府(Open Technology Development: Open Source and the US Government)」という発表だった。Scott氏は国防総省(DoD)のOpen Technology Development Initiativeのプロジェクトリーダーでもある。

Scott氏はDoDのソフトウェア獲得プロセスを改善しようとする試みと、オープンソースとその方法論を利用してDoD内のコスト削減と開発期間短縮を実現する方法について語った。彼は、米国に敵対する国々が新しいテクノロジをより迅速に採用可能である点について、米国政府が課しているような規制や調達の要件に縛られていないことをその理由の1つに挙げている。

Scott氏の発表自体はかなり短く、セッションの大半は出席者との質疑応答にあてられた。DoDの変革は徐々にかもしれないが、着実に進みつつあるようだ。DoD内部では明らかに世代の交代が起こっており、オープンソースが議題にのぼると「45歳を境界に年齢がそれより上の人々はみな首を横に振るが、それ以下の人々はみな賛成する」とScott氏は述べている。

かなりの数の出席者がいたため、質疑応答は次のセッションの直前まで続いた。OSCON事務局の方々には、改善点として、セッション間の空き時間をもう少し多めに取ってもらえるようにお願いしたい。45分セッションの合間に5分しか空き時間がないと、前のセッションが少し長引いただけで次のセッションの開始時間が来てしまうため、次のセッションがコンベンションセンターの別の階で行われる場合は、その開始に間に合うように移動するのが大変なのだ。

Linuxカーネルの現状

続いて出席したのはGreg Kroah-Hartman氏による「Linuxカーネルの現状」で、後で行われた同氏の5分間ライトニング・トークとよく似た内容だが別の発表である。このセッションはほぼ全体が質疑応答であり、出席者からのカーネル関連のあらゆる質問にKroah-Hartman氏が答えていた。

この2年間でLinuxカーネルのパッチ作成に関わった人は1,725名にのぼり、24時間体制のもと、1時間あたり2.8個のパッチが作られている、とKroah-Hartman氏は説明している。現在、Linuxカーネルのコードは700万行ほどあるが、200万行が追加され、110万行が削除されたそうだ。

Kroah-Hartman氏によると、カーネル開発の新しい手法 ― 2.6以前の2.5シリーズで行われていたような長期的で不安定な開発モデルを採用するのではなく、新しい機能を迅速にリリースする ― はうまく機能しているという。

予想したとおり、誰かがバイナリドライバに言及し、バイナリドライバを出荷するディストリビューションを告訴するという昨年の話を持ち出した。確かにその話はしたが、そうした不愉快な連中がバイナリドライバの出荷を取りやめたので、今のところそうした措置はとっていない、とKroah-Hartman氏は答えていた。

企業がGPLの要件を満たさずに済ませるために、非GPLのコードを出荷してユーザにコンパイルとリンクを行わせることは、違法ではないかもしれないが、「卑怯で倫理に反する」ことだ、とも彼は語っていた。

次のセッションが始まるまでの間、語り合いの場であるOSCampルームに再び立ち寄った。OSCONの1日目に寄ったときには、ほとんど人がおらず、OSCampの存在意義に疑問を感じたのだが、この日は部屋のコンセプトが十分に機能しているようだった。午前中は約15人がこのOSCampルームにいて、いくつかの小さなグループに分かれてそれぞれのテーマについて熱心に語り合っていた。部屋の予約用掲示板には、人々が集まって議論を行う時間とトピックがいっぱいに書き込まれていた。OSCampの企画および実行担当者の1人、Brandon Sanders氏に話を聞いたところ、彼もこの利用状況には満足していた。

ライトニング・トークへの出席

この水曜日、最後に出席したのが「ライトニング・ステーツ・オブ(Lightning states of)」セッションで、オープンソース・プロジェクトに携わる人々が順に前に出て行ってプロジェクトについて5分間のプレゼンテーションを行うというものだ。

5分という制限時間が厳しく適用されるため、時間内に終わらない場合はプレゼンテーションが中断されてしまうことになる。実際には、すべてではないが、大半のプレゼンテーションが5分経過の通知前に終了していた。

SunのMike Kupfer氏は、5分の持ち時間を使ってOpenSolarisについて発表し、Sunの外部にいる開発者が容易にOpenSolarisの開発に携われるように、同社は、社外協力者のためのバージョン管理を実施しつつある、と述べた。また彼は、依然としてSunがOpenSolarisの一部のオープンソース化に取り組んでいることも話していた。

GentooのDonnie Berkholz氏は、Gentooインストーラ、外部ソースリポジトリのオーバレイ機能、設定と管理のためのeselectフレームワークなど、Gentooの新機能と導入予定の機能についての発表を行った。

ライトニング・トークは、詳しい情報を伝えるには向かないが、なじみのないプロジェクトの概要を次々に把握するには最高の方法だ。たとえば、私はRichard Hipp博士によるSQLiteの発表に関心を持った。それまでSQLiteについて聞いたことはあったが、同プロジェクトが何を提供すべきかについては明確な考えを持っていなかった。Hipp博士の短いプレゼンテーションを聞いた後、時間をとってSQLiteについてもっと調べたいという気になった。

Jeff Waugh氏はこのセッションで2つのプレゼンテーションを行った。1つ目は、広く使われている彼のPlanetというソフトウェアに関する内容だった。このソフトウェアはDebian、GNOME、Ubuntuをはじめとする多数のディストリビューションのための「プラネット」サイトを提供するものだ。Waugh氏が話題にしていたのは、初めての正式リリースとなるPlanet 2.0だった。いや、1.0の誤りではなく、確かに2.0なのである。Waugh氏によると、Web 2.0に合わせるためにこのバージョン番号にせざるを得なかったのだという。

また、Waugh氏は、オーディオおよびビデオメディアに対するアノテーションやブックマーキングを行うためのオープンスタンダードであるAnnodexについても発表を行った。今のところ、ビデオファイルやオーディオファイルの特定の箇所への直接のリンクを誰かに送ることはできないため、Web上のビデオ中の面白いシーンを友人や同僚に伝えたい場合は、そのビデオ全体を見てもらわなければならない。

Annodexがあれば、「一時的なURI」を使って、たとえば、ビデオや音楽のファイル中のある20分間に対するリンクを指定できる。すでにAnnodexのサイトには、Firefox向けのプラグインや動作テスト用のブックマーク付きファイルがいくつか用意されている。

こうしたライトニング・トークで最も傑作だったのは、Greg Kroah-Hartman氏による最後の発表で、その内容はLinuxカーネルの状況を伝えるものだった。Kroah-Hartman氏が昨年に行われたカーネルの変更箇所のリストを読み上げている間、彼の娘である幼いMadelineが、カーネルのコード行数や1年間の変更回数などの数値が記された手書きのボードを掲げるのだ。Kroah-Hartman氏が発表を終えるにあたって、彼女が最後に掲げた3つのボードには「ペンギンのおもちゃを買ってあげるからって言われて」、「パパに手伝わされているの」、「もうこんなことは止めてって誰かパパに言ってちょうだい」と書かれていて、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。

展示フロア

展示フロアがオープンしたのもこの日だったため、午後7時半まで続いた展示のすぐ後に展示ホールでレセプションが行われた。展示ホールには、Sun、MySQL、ActiveStateなどのブースのほか、興味深いことにTeX Users Group、Free Software Foundationといったオープンソースやコミュニティのプロジェクトも混じっていた。

食事に加えてワインやビールがひっきりなしに振る舞われたことも間違いなく理由の1つだったろうが、このレセプションは大盛況だった。そこで数名の出席者と言葉を交わす機会があったので、今回のカンファレンスの感想や、時間とお金をかけて参加した甲斐があったかどうかを尋ねてみた。セッションの中には思っていたほど技術的な内容ではなくて期待外れのものもあった、と話していた人が数名いたものの、返ってきた答えは圧倒的に肯定的なものが多かった。全般的に見れば、参加者は今回のカンファレンスを楽しんで過ごし、同じ志を持つギークたちに直接会って関心を寄せるオープンソースのテクノロジについて語り合う機会を満喫しているようだった。

NewsForge.com 原文